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 「月に願いを」〜夏の心〜
もうすぐ、夏が終わる。まだ終わりそうにない英語の課題をやりながら、ふと外を見る。窓から涼しい風が入ってくる。まだ、13時だっていうのに。ぼーっと流れる雲を見つめていると私の電話が鳴った。
(どうせ、暇な友達でしょ。)
遊びの誘いなら断るつもりで電話に出る。
「はい、もしもし?」
表示画面に出た名前を確認しなかったからか、女友達の声ではなかった。
「もしもし・・・これ田中の電話?」
電話から、西田の声が聞こえてくる。
「えっ、何。西田?今、どこ?」
相手は西田だった。誰に番号を聞いたか知らないけど、いきなりすぎる。
「今、お前の家の前。ポストにメモ入れたの、見てねーな。」
ポスト?11時に起床した人間にポストに向かえ、なんて。メモの内容を知らないので、とりあえず聞いてみる。
「メモ?ごめん。ポストに行ってないから。…用なんだったの?」
「ん〜?あぁ、午後1時に、川公園のすべり台に来い、って書いたて入れた。」
「ふぅ〜ん。って今もう、時間じゃん。もしかして待った?」
「当たり前だ。ちょっと話があるんだけど。」
「ごめん。あ、今、外出るから。ちょっと待って。」
誰もいない家の階段をどたどた下りて、玄関に向かう。外に出ると、太陽の光と涼しい風が一緒に入ってきた。やっぱり外は気持ちいい。
「ごめん。って今日2回目だよ。ま許して。で…話って何?」
彼は、いつもと変わらない格好で私の前に立っている。部活で焼けた黒い肌が、私にはまぶしかった。
「ここじゃ、なんだから。公園行かない?」
西田に言われ、公園まで行く。彼の隣に並ぶと彼は私より大きくなっていた。
「西田焼けたね〜。真っ黒だよ。やっぱり部活?」
「まあな。大会あったから頑張ったんだぜ。」
「へ〜。頑張ってるね。」
私は西田と歩く。公園に着くと西田とすべり台で遊ぶ。私はすべる。西田もすべる。私はふと西田を見上げると、黒い顔がすこし赤くなっている。西田がすべろうとしている私のところまできた。私がすべり台をすべって立っていると、そこに西田は立っている。いつもとかわらないようで、少し赤らんだ西田はかっこよかった。
「どうしたの?びっくりするじゃん。」
「ん〜…あのな。落ち着いて聞けよ。俺、実は…」
ココまで来て状況が読めた。少し遅すぎたかもしれない。
「オ、俺は…田中が……好きだ。」
「えっ…!?」
つい数十秒前に理解ったつもりでも、理解しきれない。
「あ、あの…ごめん。何て言ったの…?」
「だから、俺は、田中が好きだ。大好きだ。」
【好き】【大好き】……私の中で理解った。
「やっと聞こえた。」
「俺の言ったこと、わかった?」
「うん。わかった。」
「で…お前は?俺の事、どう…思ってんの?」
「…私も…私も、西田の事好きだよ。大好き。」
真っ黒に焼けた彼と、すべり台の前に立っている2人。今、終わりそうな夏は、青空と一緒に青春になった。

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| 21:05 | 月に願いを | comments(0) | - |
 「月に願いを」〜曇りブランコ〜
「今度の土曜日、空いてる?」
いきなり、向こうから話しかけてきた。最初は少しびっくりしたけど、うれしかった。
「空いてるよ。何で?」
「ん〜・・・。何でだろうな。とりあえず、待ってるから。」
あの人の顔、赤くなってた。普通に話そうとがんばってた。土曜日、待ち合わせ場所に行った。
「あ、来た来た」
向こうは、走ってきた。でも、空は曇っている。
「雨、降りそう。降ったらやだね。」
私は、空を見上げて言った。あの人は、「ついてきて」とだけ言って、公園まで行った。公園には、誰もいない。遊具も、ブランコだけ。私たちは、ブランコをこいだ。
「で?話って何だったの?」
私は、笑っているあの人の顔を見た。
「あ、そうだった。」
あの人は、ブランコをとめて、ブランコに座った。
「あのさ、俺・・・お前のこと好きなんだよね。」
大体、ここまでの展開で読めてはいたけど、嬉しかった。
「あのね、私も、好きだよ。」
十秒くらい、時間が止まった気がした。その時間は、私たちのもの。雲も、空も、皆止まった。
雨が降りそうな空の下で、私たちは、笑っていた。

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| 20:55 | 月に願いを | comments(0) | - |
 「月に願いを」〜以心伝心〜
今日、あの人とメールをすることにした。最近手に入れた携帯であの人にメールを打つ。
「今から、メール出来ますか」
・・・(メール送信完了)
画面に現れる、無愛想キャラを見つめながら、返事を待つ。数分後、お気に入りの曲と共にメールが来た。
「いいよ。今暇だから。」
私は小さい機械に微笑みかける。
「今日の集会お疲れ様。準備大変だったでしょ?」
あの人は私がメールを打つと5分以内で返してくれる。ただ、その数分が私にとってとても長い。
「問題なし。俺はそれが仕事だから。将来もこういう仕事やりたい。」
あの人は、皆の前に立ってみんなを引っ張る、そういうタイプの人。
「なんか、リーダータイプの人ってかっこいいよ。私は無理だから。」
「そんなことない。麻子は、みんなの話をまとめられるから貴重な人だよ。」
私は、うれしかった。なんだか、ほめられた気がする。
「ありがと。なんだかうれしいかも。」
「麻子は素直だよな。俺、好きだよ。」
・・・!?
私は、びっくりした。
「どういう風にとらえたらいいの?」
「俺は麻子が好きってこと。わかった?」
・・・。
「ありがと。嬉しい。」
「付き合ってくれないかな、俺と。」
「私でよければ、お願いします。」
今夜のあの人とのやりとり、嬉しかった。明日も、あの人と、つながっていたい。

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| 22:45 | 月に願いを | comments(0) | - |
 「月に願いを」 〜帰り道〜
少し暗い、夕方の道。今日も私は、一人で家に帰る。どうせ、いつものこと。だから気にならない。
「・・・。」
後から誰か呼んでいる、誰だろう?振り返ると、佐藤君が立っている。
「あれ、何してるの?何処行くの?」
私は、微笑んでいる佐藤君に声をかけた。
「いや、別にね何でもないんだけど。ただ、一人で歩いてるの見つけたから。」
佐藤君は、不思議な人。いつも、すましている、と思ったら、笑顔でいたり、他の女子が話しかけても相手にしないのに、私が話すと、相手してくれたり。割りに、クールな所しか見たことがなかった。
「ふぅ〜ん。ありがと。」
私は嬉しかった。一人でいるとき、佐藤君がいると、少しだけ、笑顔になれる。
「ね、家近くなんだけど、一緒に来てくれる?」
佐藤君は、うなずいて、一緒に来てくれた。
「佐藤君さ、何で女子と話してあげないの?」
佐藤君は、夕日を見つめて話した。
「あぁ、だってさ、女子って面白くないじゃん。そりゃ、中身によっては楽しいけど、いっつも恋愛もんばっかり。麻恵はさ、ほら、どじな日常生活の話でしょ?それが面白いから、いつも聞いてるの。」
やっぱり、佐藤君は、不思議な人。
「ふぅ〜ん、そうなんだ。」
何だか私は、不思議な気持ちだった。
「あ、家ここだから。じゃね。」
私は、佐藤君に手を振った。
「またさ、一人でいるとこ見つけたら、声かけるよ。お前、いい奴だから。」
佐藤君は、それだけ言うと、手を振って帰っていった。
私はまだ、不思議な気持ちを抱いたまま、家に入った。

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| 22:42 | 月に願いを | comments(0) | - |
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